「富田林市役所庁舎建て替え問題」について
6月議会でおこなった、日本共産党議員団の質問をそのまま掲載します。
富田林市役所の新庁舎建て替えについて伺います。
現地建て替えでコンパクト化すると発表していた庁舎建て替え計画が、突如、庁舎を分散化し、一部機能をすばるホールに本移転すると計画が変更されました。市民の生涯学習スペースが削減され、当初の建て替え計画が、庁議で大幅に変更が加えられたという問題について質問します。
この計画は来年7月からすばるホールに市役所庁舎の一部機能を移転させ、市民が利用しているスペースの多くを使えなくするというものです。しかも、これが市役所建て替え工事中だけの仮移転ではなく、本移転するというのです。
すばるホールに分散化させるという部署は「上下水道部」と「産業まちづくり部」のみ、と報告されましたが、実際には多くの課が移転することになります。
・上下水道部は、下水道課
・産業まちづくり部は、道路交通課、商工観光課、農とみどり推進課、都市計画課、金剛地区再生室、住宅政策課、他にも人権市民協働課、総合事務室、農業委員会があり、それら全てを移転するとしています。また、公園緑化協会、国際交流協会もすばるホールに配置するとされています。
これらの部署が移転してくることにより、市民がすばるホールを利用できなくなるスペースは、2階の小ホールおよび会議室、3階の展示室、清光の間、アルデバラン、ロビーです。また今後、さらにすばるホール本来の機能の縮小も懸念されます。
この、庁舎建て替えについて、どのような流れで検討されてきたのかについて、富田林市のホームページにしるされている内容を引用します。
『富田林市本庁舎は、北館、南館、別館があり、北館および別館は昭和45年の竣工から49年が経過、南館は昭和59年の竣工から35年が経過しており、耐震性能の不足や設備の老朽化等、様々な問題を抱えています。
平成18年度に実施した耐震診断では、現行の耐震基準を大きく下回る結果となり、耐震補強などを検討しましたが、市の公共施設全体を考え、小中学校・幼稚園・保育所等、他の公共施設の耐震改修を優先して進めてきました。
しかし、平成28年4月に発生した熊本地震では庁舎が被災し、行政機能に支障をきたす事態になったことから、本市では平成29年度に行いました市庁舎耐震化構想業務において市庁舎耐震調査を実施し、これをまとめた「富田林市庁舎耐震調査業務報告書」で庁舎北館の耐震性能が確保されていないことを再確認したことに加え、衛生配管等設備・庁舎建物の老朽化、大規模災害発生時の対応に関わる課題など、多くの課題点を把握しました。
また、これらの課題の改善策を検討するため、平成30年度に「富田林市庁舎耐震化庁内検討会議」を設置し、「富田林市庁舎耐震化庁内検討会議報告書」をまとめました。
さらに、令和2年度には耐震化を含めた新庁舎建設の基本計画となる「富田林市庁舎整備基本計画」を策定し、現在は新庁舎の設計を行うため、検討を進めています。』
という、内容です。
新庁舎建設の基本計画となる「富田林市庁舎整備基本計画」は、市民や学識者、障がい者団体や商工団体などで構成された委員会で様々な視点で議論され、じっくりと練り上げられたものです。
計画策定までに、市民アンケートの実施、市民ワークショップなど意見聴取がおこなわれたほか、作られた整備基本計画素案について市民説明会を開催し、市民へのパブリックコメントを実施して改めて意見を聞き、そうしてようやく昨年11月12日に策定され、2021年2月広報で、新庁舎は93億円で15500平米の庁舎建て替えとなる旨が大きく報告されたばかりでした。
こうした丁寧な手順を踏み、多田市政の時から議論を積み重ね、市民や議会の意見も取り入れながら進められてきました。
建て替え場所についても、様々な候補地が検討された結果、現在の場所での現地建て替えが最善との結果が出され、どの過程でも、「庁舎分散化」という案は一度も出ていません。それは、庁舎を分散することは、市民にとっても職員にとっても、利便性や効率が著しく損なわれるからです。
市役所の業務は非常に多岐にわたり、住民情報・税金・福祉・健康保険・子育て・教育関係業務、工事の設計など、市民の個人情報や秘匿性の高い情報を扱う業務がたくさんあります。そのため、これらの情報の取り扱いには最大限の注意を払い、確かな安全性を確保し、情報を管理することが欠かせません。また、市民の皆さんからの複雑なご相談への対応では、関係部署が直接お話しを聞きながら解決を図る必要があります。こうした対応は市役所を拠点にした情報セキュリティーや職員おび組織の連携があるからこそ可能になることであり、市役所の分散化はこうした機能・連携に大きな支障をきたすと思われます。
これほど簡単に、庁議で大幅に変えられるのであれば、市民ワークショップも委員会も議会などもまったく意味をなさず、今までの議論は無に帰すと言っても過言ではありません。
多田市政の時にもなかった、あまりにも非民主的で強引な進め方だと言わざるを得ません。
2月後半に議員は、仮庁舎を建てずにすばるホールに一部機能を仮移転するという方針転換についての説明を受けました。仮庁舎を建て替えるコストを削減するために一時的に仮移転する、という、この時点での説明は一定理解できました。しかし、そのたった2ヶ月後の4月26日に、全員協議会が開催され、突然、すばるホールには仮移転ではなく本移転、庁舎分散化するのだという説明が市長・副市長・担当課によって行われました。
その際、配置図案も、コスト面の再試算データも、方針変更に至った経緯や庁内での議論の過程がわかる資料も、何も示されず、たった1枚の紙が渡されるというずさんな報告に、驚きを隠せませんでした。
あまりにも資料がなさすぎること、説明が不足していること、今まで議会でも「総務文教常任委員会」を全議員が参加できるようにして庁舎建て替えについて議論するなど、積み重ねてきた話し合いが水の泡となり、はなはだしい議会軽視であることが問題になりました。
また、市民の皆さんからいただいたアンケートや、パブリックコメント、おこなったワークショップや市民説明会などでも「庁舎分散化」は一切説明されておらず寝耳に水のことであり、市民の声を無視しているとの意見が多数出されました。
「富田林市庁舎整備基本計画策定委員会」や議会での議論をふまえず、庁議で大幅な変更が可能とするなら、市民や議会を無視した行政運営となります。ましてや庁舎の建て替えという半世紀に一度の大事業であるにも関わらず、あまりにも拙速な対応です。
市民、議会だけでなく、市役所で働く職員の皆さんの意見も無視した、一方的なトップダウンだと思いますが、市長の見解をお聞かせください。
2020年11月策定の「新庁舎基本整備計画」に基づき現地に15500㎡で建て替えをする方針から、3000㎡規模を縮小し、すばるホールに仮移転するとしていた機能を本移転するとの方針変更が突然出されましたが、市役所を分散化させる大幅な方針変更です。しかも、その経過が非常に不透明です。
「新庁舎基本整備計画」の大幅な変更までの再検討の経過を、時系列で、日付も明確に示してください。また、基本設計の委託業者の選定について、プロポーザルの経過と評価された点、契約日と、実際に着手されたのはいつかも教えてください。
また、プロポーザル募集の際には庁舎分散化、本移転という内容での提案募集ではなかったはずですが、業者が基本設計を着手するにあたり、いつ、どのように指示を出し、変更されたのか、お聞かせください。
すばるホールへの庁舎機能の移転には、多くの問題があります。
すばるホールの部屋は、窓もなく風通しが悪いほか、太陽の光も入ってきません。もともと目的が異なるため当然ですが、こうした環境が市職員の働く環境として適切とは言えません。職員のストレスの増加など、労働環境の悪化について、どのようにお考えでしょうか。
窓に限らず、エレベーターやエスカレーターの増設など、かなり大掛かりな改修工事をしなければ、市役所機能としてすばるホールを利用することには問題があります。市民の方の利便性はどう確保するおつもりでしょうか。
市役所の業務が分断されてしまうことや、新たなスペースで機能的に業務をどうこなすかなど、この問題は、労使合意が必要な案件ですが、職員や労働組合などとの協議はなされたのでしょうか。
現在も多くの市民の方々がすばるホールを利用されています。今回利用できなくなるとされているスペースは非常に利用率も高いところです。それぞれの部屋の利用率をコロナ前3年間で教えてください。
また、すばるホールは現在、月曜日が休館日ですが、土日が休みの市役所の業務を並行する方法について、どのように考えでしょうか。
また、すばるホールの指定管理をされている富田林市文化振興事業団は、もともとすばるホールを運営するために作られた団体で、30年に渡って富田林市の文化振興を担ってこられました。「富田林市文化振興事業団」からの意見聴取、協議はおこなってきたのでしょうか。
そして、今後すばるホールの利用に関して不便を強いられ、文化活動に支障をきたすことも考えられる、すばるホールを利用されている市民の方々や日頃利用されている団体、現在14団体で構成されている「文化団体協議会」などへの意見聴取や協議はおこなってきたのでしょうか。
日頃施設を利用している団体のみなさんは、市役所建て替えの間、一部ホールなどが当面使えないだけと聞かされており、この先ずっと使えなくする、という市の方針転換は知らされていません。
強引に市民の交流・生涯学習活動拠点を奪うというやり方は、先の3月議会での金剛連絡所の小ホール廃止を思わせるやり方です。
すばるホールの文化施設機能と生涯学習機能の縮小は、文化拠点としてのすばるホールの実質「廃止」に等しい内容であり、本市の文化レベルの著しい低下が懸念されます。先の5月31日の全員協議会で報告があった「生涯学習推進プラン」の策定内容とも矛盾すると考えますが、市長の見解をお聞かせください。
今回の突然の計画変更は、あまりにも市民不在、関連機関および議会を軽視したやり方であり、これまでの議論を全く無にするものであります。テレワーク、IT化を促進させ、「どこでもサービスが受けられる」、「来なくても良い市役所庁舎」と、先の全員協議会で説明されました。
市民ワークショップでは、市役所に求めるものとして、「つながり」「集える場」「市民の居場所」「いつでも頼れるところ」といった心あたたまるキャッチフレーズが多数出されていました。本当に、市役所は、市の職員さんは、日頃からも、そしていざという時にも、市民の皆さんの拠り所として頼りにされているのだ、と痛感しました。
「来なくても良い市役所庁舎」というのは、市民の願いとはかけ離れています。
吉村市長は、「誰ひとり取り残さない富田林市」をかかげていますが、これでは、交通手段を持たない人、高齢であちこちの庁舎へ行ったり来たりすることが困難な人、障がいを持つ人、IT機器を使いこなせない方々、その他、多くの市民が市役所を頼ることができなくなり、取り残されてしまいます。
今一度、庁舎分散化を見直し、市民に取ってわかりやすく、利便性の高いバリアフリーな、そこに行けばすべてが完結する、窓口が集約された庁舎、災害時にも対応でき、コロナ禍のような状況でも密を避けられるだけの十分なスペースの確保を進めるべきと考えます。市長の見解をお聞かせください。
■ 市役所庁舎建て替えの問題について、再質問をおこないます。
今回の最大の問題は、市民の声を聞かず、議会や職員の議論もなしに、計画が一方的に突然変更されたことです。もう一つは、市民の文化活動と生涯学習活動の中心となっている、すばるホールの機能が破壊されてしまうことです。
最も重視すべき市民の要望に応える市政運営にたいする態度が、先ほどの答弁の中にあらわれています。先ほどの答弁の中には、市民の声や要望に応えるという内容は一言もありませんでした。
長年積み重ねてきた検討では、市民のみなさんからパブリックコメントや専門家も交えた意見では「明るくみんなが集える庁舎がほしい」「人がつながる人にやさしい富田林」という声がたくさん寄せられていました。コンパクトで1か所に集約された市役所機能と、市民に優しい市役所というのが結論だったはずです。
8000万円近くをかけて依頼したコンストラクションマネジメント会社の意向も、プロポーザルで選定された設計者のプランも、現庁舎場所に1か所に集約された提案が選定されて、市民にも公表されていました。
①4月16日の庁議で庁舎の本移転による分散化と、すばるホールの小ホール、会議室、展示室、清光の間などの廃止の方向を決定されたということですが、具体的にどのような市民の声、職員の声、議会の声を反映してこの結論に達したのか、お聞かせください。
②政策決定に際し、意思形成過程の記録が重要だと思われます。この庁議で部局からの意見はどのようなものが出され、その記録は残されているのでしょうか。
すばるホールへの庁舎分散化は、大きな問題が発生します。
①「事業費の縮減を図るため」と答弁されていますが、すばるホールに市役所機能を持たせるためには、エレーベーターやエスカレーターの増設工事や事務スペースへの改修工事が必要です。また、利用率93%の小ホールの利用者などが同等の機能をもとめるなら、喜志のレインボーホールまで電車で行かなければなりません。「事業費の縮減」と答弁されましたが、庁舎の分散化による膨大な改修工事費用と運賃などの市民負担分は、どのように見積もりされているのかお聞かせください。
②「行政機能を十分検討する」とされていますが、市役所機能を分散化すると、職員の仕事場が分断され、市民がどちらの庁舎に行ったらいいのかわからないという問題が起こります。また、すばるホールを使えなくなった多くの利用者は、いったいどこの場所を利用すればいいのでしょうか
③「全ての人にやさしい庁舎をすすめる」としていますが、すばるホールの利用者をレインボーバスも通らない市民会館などに追いやり、駅近くだった庁舎を高齢者では歩けないようなところに移転させるなど、とても「全ての人にやさしい庁舎」とはいえないのではないでしょうか。
④「地域文化の創造に寄与し、市民文化の振興を図る」という設置目的を定めた、すばるホール条例に反する庁議決定は、このままでは条例違反では。
以上について、明確なご答弁をお願いします。
■最後に要望しておきます。
庁舎建て替えについては、長年市民の皆さん、職員の皆さん、議会でも議論を積み重ね、コンストラクションマネジメント会社との契約で8000万円近くを支払う事を決め、プロポーザルで選定するため多くの設計事務所にもプランを提出してもらい、業者の選定まで済ませていました。しかし、かかわったすべての方や業者に断りもなく、庁議だけで方針変更が決められました。
この非民主的なすすめかたに問題があると、各方面から批判がよせられています。
今回の質問では、庁舎建て替え問題で意見や提言をいただいてきた市民のみなさんや、市役所・すばるホールを利用してきた皆さんに、意見を聞いたのかということを繰り返し伺いましたが、答弁がありません。当然です。市民の意見を全く聞いていないのですから答えようがありません。
また、この事業計画では費用削減の試算だけが出され、改修費などの新たに発生する支出の試算が出されていません。それにすばるホールが利用できなくなることや代替え施設への交通費負担など、市民がこうむる損失も全く示されていません。
いままで市民の皆さんにご参加していただいてきたワークショップでは、「人がつながる人にやさしい富田林市役所」を願う意見がたくさん出されていました。
「人にやさしい市役所」というのは、人の意見を聞くというところから始まり、機能的で快適で無駄のない市役所を、みんなの力で作り上げていくという手法でつくられていきます。全員協議会で答えておられた「人が来ない市役所」をめざすのではなく、「市民が機能的に暖かく集える」というのが人にやさしい市役所だと考えます。
今後、庁舎建て替え事業をすすめるにあたっては、市民、職員、議会の意見をよく聞くこと、また、すばるホールの利用者の文化活動や生涯学習活動を保障すること、そこで現在働いている職員の方の権利を守ることを、最後に強くもとめておきます。
長くなりましたが、以上が庁舎建て替え問題についての、日本共産党議員団の代表質問です。